医療法人制度
医療法人は、個人である院長とは別に、医院組織が独立した法律上の人格主体をもつことをいいます。
医院経営の基盤を確固たるものとし、将来医療承継や節税を行うための対策としても有効であると考えられています。
ただし、医療法人化すれば必ずメリットがあるわけではないため、自院の経営状況をふまえ判断する必要があります。
また、医療法人化の手続きには様々な書類の作成・提出が必要となるので、税理士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめ致します。
Q 個人経営と医療法人の主な相違点
① 診療所の開設・移転について、個人の場合事後的に届出にて可能であるのに対し、医療法人の場合事前に許可申請が必要です。
② 登記や決算の届け出について、個人の場合は不要であるのに対し、医療法人の場合は必要です。
③ 会計年度について、個人の場合1月1日~12月31日であるのに対し、医療法人の場合は法人の任意(1年)とされています。
④ 税務申告について、個人の場合翌年の3月15日までに所得税(住民税・事業税)の 申告を行うのに対し、医療法人の場合は決算終了後2カ月以内に法人税、住民税および事業税の申告を行います。
Q 医療法人のメリットとデメリット
メリット① 税率が低くなる
メリット② 給与所得控除が受けられる
メリット③ 法人契約の場合、支払保険料として損金(税法上の費用)計上できる
メリット④ 退職時、役員退職金として損金(税法上の費用)計上できる
メリット⑤ 分院展開できる
デメリット① 事務手続きが増え、煩雑になる
(主務官庁へ決算届を毎年提出、決算後の届け出や登記等)
デメリット② 社会保険の加入義務が生じる
デメリット③ 数種の業種を同時に経営することは認められない
デメリット④ 利益が出ても、配当することができない
デメリット⑤ 解散した場合、医療法人所有の財産が国庫に帰属する
Q 医療法人化すべき経営者のケースとそのねらい
① 順調に経営が推移している ⇒事業の承継のことを考え、引退に備える
② 多額の金額の生命保険に加入している ⇒生命保険料の損金処理ができる
③ 年所得税を多く納めている ⇒節税を考える
④ 医療法人を長期的(5年10年)に判断できる ⇒事業の発展を見越して行動する
⑤ 分院や施設の展開を予定している ⇒施設ごとに管理者をおくことで可能になる
⑥ 資産が多く、後継者がいる ⇒相続・事業承継対策に有効
Q 医療法人の設立手順
医療審議会の審議 ⇒ ②都道府県知事の認可 ⇒ ③設立登記
医療審議会 ・・通常年2回程度、事前説明会が開催されるので、その内容にしたがい申請書などの形式的要件を整えます。
都道府県知事の認可 ・・都道府県によっては、診療所の実績が1年以上必要等の条件が付される場合もあります。
したがって、開業時は個人、2~3年後に医療法人化するケースが多いようです。