診療所における介護保険サービス
本日は、介護保険サービスの概要と留意点についてお話いたします。
介護保険サービスの中には、医療機関で実施可能なサービスが複数存在します。
① 訪問看護
② 訪問リハビリテーション
③ 通所リハビリテーション
の3つが考えられます。
ここでは、この3つの介護保険サービスの概要を説明します。
1 訪問看護
訪問看護とは、在宅療養を行っている患者様や要介護者の方などに対して看護師が自宅を訪問し、必要な療養上の補助を行うサービスのことです。
訪問介護と異なり医療的な支援が求められるため、医療機関が主に提供するサービスと位置づけられ、長期的な療養を必要とし、かつ症状が安定しており入院による治療の必要がない利用者が対象となります。
訪問看護の内容としては、
① 病状の観察・管理
② 清潔の保持
③ カテーテル管理などの診療補助
④ リハビリテーション
⑤ 家族や介護者の方への療養上の指導・支援
などがあり、いずれも主治医の指示に基づいて行うこととなっています。
なお、留意点としましては、病医院が訪問看護サービスを実施する場合には、設備基準等があまり厳しくないため、開設が比較的容易であります。
ただし、利用者の方に支持されるには、人員のコミュニケーション能力などソフト面の充実が必要となるでしょう。
2 訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションは、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が要介護者の方などの自宅を訪れリハビリテーションを実施するサービスのことです。
施設への長期入所ではなく在宅型で利用される方の運動機能や日常生活作業力の減退防止・向上をめざすことから、計画的な医学的管理の下で提供される必要があり、制度上は医療機関のみが実施可能なサービスとなります。
具体的なリハビリテーションの内容としては、体位変換・起座・離床訓練、起立訓練、食事訓練、排泄訓練、生活適応訓練、基本的な対人交流の維持・拡大などがあります。
なお、留意点としましては、PT、OTの国家資格取得者数は、PTは平成12年当時2万6921名から平成24年の統計では10万560名、OTは平成12年当時1万4880名から平成22年の統計では5万3080名と4~5倍ほど増加しています。
医療施設の数の割には供給過剰となっており、優秀な人材が増加している半面、待遇次第によっては、人材の質の低下が懸念されます。
3 通所リハビリテーション
通所リハビリテーションは、要介護者の方の自立的な生活を支援するために専用施設でリハビリテーションを実施し、心身機能の維持回復を図ることを目的としたサービスです。
通所介護がデイサービスといわれるのに対して、通所リハビリテーションはデイケアと呼ばれています。
通所介護との違いは、心身機能の維持回復を目的に理学療法や作業療法などのリハビリテーションを実施することが重視されていることで、医師の管理下でサービスを行うことが必要になっているなど医療色が強い点にあります。
また、訪問リハビリテーションと異なり、利用される方同士での交流が生まれ、利用者の方にとって励みとなる効果や、外出のきっかけとなり閉じこもりを防止する効果が期待できることも特徴です。
病医院にとっては、施設面や指定申請所を併設することによって、医療から介護まで患者様を幅広くケアできる点は魅力的といえます。
なお、留意点としましては、訪問リハビリテーションでも述べましたように、PT、OTの人材確保とともに、通所リハビリ施設を近隣の施設と差別化することが重要となってきます。
介護者の方からすれば、日々の食事は最も重要であるため、外注業者の選定は慎重に判断しなければなりません。
また、介護者の方のみならず、ご家族の方にとっても、入浴施設の充実と入浴介助のサービスについても重視されます。
さらに、送迎サービスの質についても吟味する必要があると思います。
平成27年度から介護保険制度が見直され、保険給付が縮小されました。
介護業界は需要を増していく中で、施設・人材不足などの問題も抱えていますので、介護事業参入には、十分な検討が必要となるでしょう。