医療機関の強みを生かした介護事業
生産年齢人口の減少と高齢化が急速に進展している現在では、健康保険制度が現状のまま維持できるという前提が揺らぎ始めています。将来にわたって、保険診療だけで事業を成り立たせることは、大変に厳しいと言わざるを得ません。こうした将来のリスクに備えて、保険診療以外への事業展開が一般的な考え方として広まりつつあります。
介護保険事業に乗り出す医療機関が増えてきています。介護保険も財政が厳しくなり始めていて、要介護度と医療必要度が高い人に重点を置いた制度へと変更が行われています。そのため、医療機関が手掛ける介護事業は、今後、重要なマーケットになることが予想されます。
少し前までのトレンドは老人保健施設の開設でしたが、最近は通所介護・通所リハビリや訪問看護事業を手がける医療機関が増えてきています。特に外来型のクリニックにとって、通所介護・通所リハビリは来院患者と対象者が重なる傾向があるため、相性が良いのです。
通所介護・通所リハビリは競争が激しく、多様化しています。風呂も食事も無い、短時間の機能訓練に限定したタイプや、レストランデイと称してコース料理を提供するタイプ、さらにはプールを併設した通所リハビリまで登場してきています。
こうした多様化の中でも、医療機関が運営する介護施設は、医療上のリスクが軽減され、重度の疾患にも対応できるのが大きな強みです。特に、重度の認知症の方を対象とした「認知症デイケア」は、今後ますますニーズが高まることが予想されます。